【チャレンジ連載】ヤレ紙再生プロジェクト《第4回》
デザイナーの皆様、そして日々「もっと面白い紙はないか」と探求されているクリエイターの皆様、
こんにちは!プリンティングディレクターの浦有輝です。
印刷工程で生じる「ヤレ紙(損紙)」を再利用する本プロジェクト。
前回はオクラの成分を用いて反りのない紙をつくることができました。
今回はこの手作り再生紙に「ハガキの厚み」と「透かし加工」を施しつつ、風合いを殺さずにフルカラー印刷を乗せるまでの、試行錯誤を公開します!
■プロ直伝!紙を厚くする方法
「漉く時に一回ですくう繊維の量を増やせば分厚くなるのでは?」と安易に考えた私は、ワッサワッサと木枠の中に繊維を大量投入してみることに。
……結果は惨敗。
水が網から抜けず乾燥も遅く、ただのボサボサの塊ができただけでした。
途方に暮れる中、製紙のプロである平和紙業様に泣きついたところ
「板紙や厚紙は、分厚い1枚を作るのではなく、薄い紙を何層も重ねて作られている」
ということを教えていただきました。

紙は接着剤を使わなくても、濡れた状態の紙同士を重ね合わせて乾燥させれば、繊維がガッチリと結合する「水素結合」でできています。
つまり、この原理を利用して濡れている状態の紙同士を重ねて乾燥させれば厚い紙ができる!?
さっそく試した結果、見事ハガキの厚みを持った紙が完成しました。

これで、厚さの問題は無事にクリアしました。
■思いつくままに「透かし加工を実行」
次は、紙の付加価値を高める「透かし」加工への挑戦です。
スタイロフォーム作戦
はじめに考えたのは、薄い紙を何層も重ねてつくるという発想から、普通に漉いた紙に絵柄をくり抜いて漉いた紙を重ねようという作戦です。
さて、どのように絵柄がくり抜かれた状態の紙を作ろうか……。
まず、スタイロフォーム(発泡ウレタン)を絵柄の形に切り抜いてハンコのようなものをつくり、それを紙漉きシートに押し付けようと試みました。

ところが、紙を型抜きするのとは違い、力が均等に入らず輪郭がガタガタになり、見事に暗礁に乗り上げました。
水分を多く含んだ状態のパルプに押しつけて形をつくることの難しさと、固定することの必要を知るのでした。
両面テープ作戦
そんな時、ふと遠くに目線を移すと、「両面テープ」を使って表紙と本文を貼り付けている製本部の作業風景。
「きた、これだ!!」と、紙漉きの網に絵柄の形に切った両面テープを貼り、その網で紙を漉いてみたところ……

テープの絶妙な薄さのおかげで、紙に段差が生まれ、うっすらと繊維が乗る完璧な「透かし」が完成したのです。ありがとう製本部!
■ついに風合いを残して印刷
最大の難関が印刷です。レーザープリンターは手作りの紙の風合いを消してしまうこと
が前回わかったため、インクジェット方式の印刷機を使うことに。
そこで、当社で本紙校正機として使用しているSCREEN社製の「Proof Jet F1100AQ」の登場です。
インクジェットのノズルが紙の上1mmギリギリを通過して印刷していくという超精密マシンです。

しかし、このマシーンに通せる紙のサイズは、636×469mm以上ないとセンサーが紙として認識してくれないという絶望的な壁にぶち当たりました。
そんななか、編み出した方法がコレ。

大きな紙の真ん中を四角くくり抜き、そこに今回漉いてつくった再生紙をテープで固定して「1枚の大きな紙」に偽装する方法。
題して「SDカード・アタッチメント戦法」。
microSDをカードリーダーで読み込むためにアダプタに入れてカードリーダーに挿しますよね? あのイメージです。
この力技ともいえるアナログな方法で最新鋭のセンサーを見事に通り抜け、ヤレ紙の質感を残したフルカラー印刷に成功しました!

手漉き紙特有のモケモケした「耳」が、紙を固定する強烈なバキュームに吸い込まれ機械にダメージを与えないかヒヤヒヤでしたが……今は考えないようにします。社長、ごめんなさい!)
(おまけのウラ話)
ちなみに、あれからすくすくと育ち、育ちすぎて巨大化したオクラから、凄まじい量の「ネリ成分」が抽出できることがわかりました。農家さんの廃棄オクラをエコな紙づくりに活かせるかも…というSDGs的な夢もこっそり膨らんでいます。
次回、いよいよ最終回!
なんとか厚み、透かし、印刷までクリアしました。残すは心臓部「製本」です。
サイズも不揃いで、耳のついたこの紙を、果たして機械で製本できるのか?
私たちの汗と涙とオクラの結晶である「ヤレ紙の最終形態」にご期待ください!
(第5回へ続く)