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公開:2026/07/08 ( 2026/07/07 更新 )

法隆寺の五重塔に学ぶ「心柱」
― 企業の持続性を⽀える潜在的パーパス  ―

サブテーマ : 社史・記念誌



【本コラムは、2026年2月6日の「社史・経営者伝 札幌展」でご講演いただいた、九州情報大学 中小企業経営研究センター 客員研究員の佐藤俊恵先生にご執筆いただき、全12回で特別連載します。
いよいよ最終章となる【第3章:実践と未来への継承(第8回~第12回)】では、これまでの歴史を振り返る視点から一歩進み、社史をこれからの経営の羅針盤としてどう機能させるか、具体的な活用術に迫ります。


【特別連載】社史は企業資産~未来のパーパスを創る歴史の読み解き方~《第10回》 


 第9回では、社史づくりの過程が組織内外の対話を生み出し、これまで言語化されていなかったパーパスを顕在化させることを見てきました。
 第10回では、法隆寺の五重塔にある「心柱」を通して、長く続く企業のパーパスについて考えていきます。
 建⽴から約1400 年が経過し、世界最古の⽊造建造物とされる法隆寺の五重塔。この塔の中⼼には、外側からは見えなくとも構造物全体の秩序を保ち、免震装置としても機能1)する「⼼柱(しんばしら)」と呼ばれる太い柱が通っています。
 この伝統的な柔構造は、東京スカイツリーにも取り入れられています。



■企業の「心柱」としてのパーパス

 
 企業経営において、この「⼼柱」にあたるものが「パーパス」です。パーパスは、企業の価値観そのものであり、未来を示す基軸になるものです。
 ⻑く持続している企業には、たとえ明⽂化された家訓や社訓がなくても、必ずパーパスが存在します。パーパスがなければ持続できないと言い換えてもよいでしょう。私は、明文化されていないパーパスを「潜在的パーパス」と呼んでいます。
 五重塔の心柱が外からは見えなくても構造物全体の秩序を保っているように、企業の中にも、外からは見えにくい価値観や判断基準があります。それは、日々の経営判断や、危機に直面したときの選択に表れます。長く続く企業には、そうした見えない心柱としてのパーパスが息づいているのです。

 

■見えない心柱を可視化する──社史が顕在化させるパーパス

 
 しかし、⼼柱は外からは⾒えません。
 ⾒えないパーパスを経営者が⼼の中で思っているだけでは、社員やステークホルダーと共有することはできません。だからこそ、企業の歴史の歩みの中から⾃社の⼼柱を⾒つけ出すことが必要になります。
 なぜその判断をしたのか。誰に支えられてきたのか。どのような価値を守ってきたのか。
 そうした出来事の因果関係が分かるように記録し、公開することで、潜在的パーパスは少しずつ見える形になります。
 その役割を担うのが社史です。社史は、単に過去の出来事を並べるものではありません。企業の歴史の中にある潜在的パーパスを顕在化させ、社員やステークホルダーと共有するためのものです。そうすることで初めて、パーパスは未来を示す基軸として機能していくのです。
(第11回へ続く) 2026/7/15更新予定
 
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[注]
1)法隆寺五重塔の「心柱」については、若林(2020)を参照。

[参考文献]
若林広二(2020)「柔構造の理論: イノベーション組織のデザイン」『日本大学知財ジャーナル』13,pp. 11-18.


[執筆] 佐藤 俊恵 (さとう としえ) 氏

九州情報大学 中小企業経営研究センター 客員研究員/博士(政策学)
法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程修了
専門分野はソーシャル・ビジネス、パーパス論、ステークホルダー論


著書のご紹介:『日本のソーシャル・ビジネスの持続可能性』 (中央経済社)

パーパスに着目し、組織とステークホルダーが相互作用を生み出す関係性を探求。ソーシャル・ビジネスの持続可能性を支えるメカニズムを明らかにし、新たな理論的枠組みを提唱している。




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