【本コラムは、2026年2月6日の「社史・経営者伝 札幌展」でご講演いただいた、九州情報大学 中小企業経営研究センター 客員研究員の佐藤俊恵先生にご執筆いただき、全12回で特別連載します。
【第1章:マインドセットの転換(第1回~第4回)】では、社史を「読む価値無し」から「資産」へと再定義し、企業の存在意義(パーパス)が歴史の中でどのように進化していくのか、その本質に迫ります。
【特別連載】社史は企業資産~未来のパーパスを創る歴史の読み解き方~《第4回》
パーパスは、経営陣が集まって作りあげるものではなく、また、最初からある所与のものとして存在するわけでもありません。企業がさまざまなステークホルダーと関わる中で、形成されていくものです。その過程を整理した理論的枠組みが「パーパス指向性ステークホルダー・エンゲージメント」です(佐藤,2025)。
■パーパスは段階的に進化する
パーパスの本質そのものは変わりません。しかし、ステークホルダーとの関係性の中で、「志→⽬的→存在意義」というプロセスで段階的に進化していきます。
1. 志(立志):創業者の「こういう事業をしたい」「社会の課題を解決したい」という個⼈の「志」から始まります。
2. ⽬的(同志): 「志」に共感する⼈が現れ、支援や投資をしてくれる「同志」が集まります。ここで個⼈の志は共有され、組織としての明確な「⽬的」へと進化します。
3. 存在意義(共志):「目的」が明確になると、顧客や地域社会などさらに多くのステークホルダーが関わるようになります。パーパスが組織内外にシェアされる共志となることで、社会の中での「存在意義」が高まり、事業は成長していきます。
■歴史を振り返り、⾃社のスパイラルを再発⾒する(パーパス成⻑スパイラル)
この「パーパス成⻑スパイラル」の図に⾃社の歴史を当てはめてみると、「あの危機の時には〇〇さんが⽀えてくれた」「あの挑戦が今の存在意義に繋がっている」と、現在のパーパスがどのように形成されてきたのかが⾒えてきます。
パーパスは会議室で作られるものではなく、ステークホルダーとの関わり合い(エンゲージメント)の中で育まれるものです。⾃社の歴史を振り返ることは、その成⻑の軌跡を再発⾒する作業に他なりません。

(第5回へ続く) 2026/6/3更新予定