す。画像を形成している銀やカプラーは、材料特 有の劣化がすすみダイナミックレンジが欠けた状 態となり色相・彩度・明度が失われていきます。 カラーフィルムが長時間、光にさらされると 赤色方向の劣化が進み青い画像となります。こ れを「明褪色」といいます。 また、温度と湿度の時間的変化の中に置かれ た写真は青色と黄色領域での劣化が促進されセ ピア色(赤色方向)へと変化していきます。これ を「暗褪色」といいます。 アイワード・デジタイズ・システムは色や陰影が 劣化した写真原稿内に残されたカプラーやハロゲ ン化銀の情報をデジタルで数値化し、褪色した色 数値を撮影時の数値へ演算により戻すことで色彩 とダイナミックレンジを復元する専用機器です。 フィルムの仕組みと劣化・褪色 フィルムの仕組み カラーフィルムは、感光特性が異な る 3 種類の乳剤層により構成されてい ます。乳剤層は、青色感光乳剤層(イ エロー発色:400~500 ナノメートル の感光域)、緑色感光乳剤層(マゼンタ 発 色:500~600 ナノメートルの感 光 域)、赤色感光乳剤層(シアン発色: 600~700 ナノメートルの感光域)があ り、シャッターを切ると特定の波長帯 で感光しハロゲン化銀が変化して潜像 となります。 現像工程によりハロゲン化銀が銀に還元され 各層毎にネガ画像を作り更に現像主薬とカプ ラー(色素前駆体)が結合することで色素を形成 し実像(発色層)となります。 カラーリバーサルフィルムにはカプラーが現 像液中に含まれている外式と、カプラーがフィ ルム乳剤中に含まれている内式があります。 1935 年に発売したイーストマン・コダック社 のコダクロームは外式でしたが 2009 年に製造 中止となり、現在販売されているカラーリバー サルフィルムは全て内式となっています。 明褪色と暗褪色 フィルムは、時間とともに少しずつ劣化しま スペクトルの色 フィルターで 光が吸収される範囲 赤色感光乳剤層 緑色感光乳剤層 黄色フィルター層 の分光透過度 青色感光乳剤層 の分光感度 (ナノメートル) 700 600 500 400 三層重ねた時の分光感度 不燃性 フィルム ベース ハレーション 防止層 赤色感光乳剤層 緑色感光乳剤層 黄色フィルター層 青色感光乳剤層 保護膜 カラーフイルムの感光膜と分光感度の例 カラーリバーサルフィルムの断面図 不燃性 フィルム ベース ハレーション 防止層 シアン発色層 中間層 マゼンタ発色層 黄色フィルター層 イエロー発色層 保護層 カラープリントの断面図 イエロー発色層 中間層 マゼンタ発色層 中間層 シアン発色層 保護層 モノクロフイルムの断面図 表面保護層 乳剤層 下引き層 フィルムベース 下引き層 ハレーション 防止層 モノクロプリントの断面図 *ナノメートル(nm)は 10億分の 1メートルのことです。電磁波の一部である光を波として 見ると波の山、谷の間隔である波長が光の色を決めます。人間の眼が感じる光を可視光と 呼び、およそ 400 から 700 ナノメートルの波長の範囲をさします。 ゼラチン層 乳剤層 ポリエチレン層 ポリエチレン層 パッキング層 4 フィルムの仕組みと劣化・褪色