2025年4月 第25号(通巻371号) Book Stories 本づくりのさきにあること─。 『小樽市立病院ガイドブック80 人のドクターが語る身近な病気と対策』 【編集者】有村 佳昭さん ほっかいどうの本    『きりんのうた』北海道新聞社 『札幌クラシック建築追想 都市と建築 老眼遊記』亜璃西社 『ファシリテーションの手引き書』共同文化社 十勝で体と心の成長を育む体操教室を運営し 開かれた大学、地域の健康づくりにも取り組む  ─ 一般社団法人 ちくだいKIP 特 集 北海道の印刷出版文化情報誌 クォータリーアイワード Quarterly 季刊アイワード
帯広市に、会員数500人を誇る人気の体操教室「ちくだいKIP」があります。 その活動拠点は、国内唯一の国立農学系単科大学である帯広畜産大学(以下、畜大)です。 10年前、畜大の教員と卒業生の2人が始めた、ちくだいKIPのこれまでの歩みと特色、体操教室を核にしながら目指す今後の 取組について、一般社団法人ちくだいKIP代表理事の山田共彦さん、同理事で畜大准教授の村田浩一郎さんに聞きました。 (文・写真/片山健一・良知貢一 取材日2025年3月6日) 特 集 十勝で体と心の成長を育む  体操教室を運営し  開かれた大学、地域の  健康づくりにも取り組む  ── 一般社団法人 ちくだいK キ I ッ P プ 中札内村でのフィットジャーニー (中札内村教育委員会提供) 「畜大教室」の風景
年に一度の発表会で成長を実感ちくだいKIPの会員は、 1 歳から 12 歳以下の子どもたちを中心に約500人がいて、この中には中学生以上の大人も約 30 人います。教えられる人数には限りがあり、多い時には100人ほどが入会を待つこともあります。体操教室は、畜大体育館のほか、帯広市総合体育館(よつ葉アリーナ十勝)、鹿しか追おい町総合スポーツセンターで開いています。子ども向けの教室は、年齢や経験に応じて「ファミリー」「ファン」「キンダー」「ジュニア」といったコースが用意され、大人向けには「otona教室」を開いています。教室を運営するスタッフは山田さんをはじめ 5 人でしたが、 4 月には新しいスタッフとして、大学を卒業したばかりの体操競技経験者 3 人を採用しました。「スタッフが増えたので、 6 月ごろから受け入れを増やして、定員を600人にすることが当面の目標です」と山田さんは話します。毎年 2 月には「KIPチャレンジ」という体操の発表会を開きます。会員の子どもたちとその保護者200~300人が見守る中、一人ずつ 2 種目を披露します。 1 つは自分が発表したいものを決め、もう 1 つは、頑張って練習すればできそうな種目をスタッフが選びます。 1 カ月前から発表会に向けた練習を始め、できないまま当日を迎える子も半数ぐらいますが、本番では“試合筋”が発揮され、 8 ~ 9 割の子が成功するそうです。「技ができた瞬間の喜びを分かち合うことも楽しいですが、普段はおとなしい子や運動が苦手な子が、人前で発表することに挑戦し、成長していく姿を見られることも醍醐味です」と山田さんは言います。声援や歓声、拍手が響くKIPチャレンジの会場は、発表した我が子の頑張ってきた過程を知る親が感極まって涙ぐむ姿も見られ、その周辺の人たちまでもらい泣きするなど、温かい雰囲気に包まれます。村田さんは「KIPチャレンジでは、みんなが本気で応援します。他人に大事にされた実感は、貴重な経験として心に残ります」と大人数の前で発表する意義を説きます。体育教員と学生の出会いにより畜大体操部創設函館ラ・サール高校から早稲田大学に入学し、 10 年在籍して人間科学の博士号を取得した村田さんは、2009年 4 月に体育教員として畜大に赴任します。「上腕三頭筋の腱の硬さをひたすら測る研究を続けていましたが、本来は人と会話することが好きで、学生たちと触れ合いたいと思いました」と教員になった動機を説明します。村田さんは、父がコーチを務める ちくだい KIP 代表理事の 山田共彦さん 帯広畜産大学の 村田浩一郎准教授 KIP チャレンジで発表する様子(ちくだい KIP 提供) 3 特集 十勝で体と心の成長を育む体操教室を運営し開かれた大学、地域の健康づくりにも取り組む ── 一般社団法人 ちくだいKIP  
函館市内の体操クラブに所属し、小学 4 年から体操競技を始めます。オリンピックに出場することを夢見て、中体連、インターハイ、全国高校選抜など各世代の北海道代表として全国大会に出場し、2004年アテネ五輪の体操男子団体総合で金メダルを獲得した鹿島丈博さん、冨田洋之さん、水鳥寿思さんとは同学年で顔なじみでした。村田さんは帯広に赴任してすぐに、十勝ジュニア体操クラブで指導を始めます。当時は小学生 5 人が所属するクラブで、大会に出たことのない子ばかりでした。「オリンピック選手を呼べば、この子たちのモチベーションはもっと上がるだろう」と、2010年 2 月に鹿島さんを帯広に招いて体操のイベントを開きます。青森県出身の山田さんは、2009年度に畜大に入学しました。「動物が好きで、動物園の飼育員になることが夢でした。高校生の時に畜大を見学して、田舎らしさを残しつつ、都市機能が整った帯広にあるこの大学が気に入りました」と畜大を志望校に定め、入学するとすぐに『うしぶ。』という牛の乳搾りをするサークルに所属します。体育の授業や実習で、村田さんと親しくなった山田さんは、体操イベントを手伝います。初めて体操選手の演技を間近で見て「こんなことができるのか」と衝撃を受け、村田さんに「バック転を教えてください」と頼みます。そこから畜大には無かった体操部をつくろうという話に発展し、山田さんが 2 年生になって間もなく、初心者ばかりの部員 5 人が集まって体操部が発足、村田さんが顧問、山田さんは初代部長になりました。総合型の地域スポーツクラブちくだいKIP始動へ畜大体操部創設から 5 年後に誕生する、ちくだいKIPも村田さんと山田さんの 2 人で立ち上げました。村田さんは、畜大に赴任する前から、「地域に開かれた大学」にしていく一環として、学内に幅広い世代の人々がさまざまなスポーツに触れる機会を提供する「総合型地域スポーツクラブ」をつくる構想を温めていました。ところが、全国大会に出場する選手を輩出するようになった十勝ジュニア体操クラブの指導などが忙しくなり、「私だけでは総合型地域スポーツクラブは無理かもしれない」と思い始めていました。その頃、 4 年生になった山田さんに就職活動をしている様子が見られません。村田さんが「どうするつも 楽しみながら運動能力を鍛えている スタッフは安全にも気を配っている 「教室」には子どもたちの笑顔があふれる 第 25 号 Quarterly 4
指導方法で参考にしたクラブなどはなく、独自にカリキュラムを構築しました。体操クラブでは、跳び箱を跳べるようにする、逆上がりをできるようにするといった目的を達成するためのカリキュラムが組まれるそうです。しかし、ちくだいKIPでは、技ができる・できない以前に、体を動かすことが楽しいと感じること、諦めずに挑戦することを最も大切にしています。山田さんは「できなくても『ここが良くなったよ』と、少しずつの成長を確かめ合いながら、楽しんで続けていくうちに、いつの間にかできるようになることが理想です」と言います。大学や地域の支援を得ながら拡大ちくだいKIPの2015年 4 月開講に向け、会員を 30 人集めることを目標に、無料体験を開くと、約200人もの参加があり、 4 月までに 90 人が入会しました。「“楽しむ体操教室”が帯広周辺には無かったので、需要はあると見込んでいましたが、いきなり 90 人もの入会があり、 2 人では手に負えないほどでした」(村田さん)。アルバイトとの掛け持ちを覚悟していた山田さんも、ちくだいKIPだけで生活できるめどがり?」と尋ねると、山田さんは「村田先生と一緒に体操を教えたいです」と答えました。山田さんは、体操部と並行して『うしぶ。』も続け、動物園の実習に行き、学芸員の資格も取得しました。「動物園の飼育員としての仕事も楽しいのですが、もっと人の喜びを直接的に感じられる仕事がしたい」と思うようになり、 3 年生から続けていた十勝ジュニア体操クラブでの選手指導を通し、子どもに接する仕事がしたいという思いが強くなったそうです。2013年 9 月に山田さんが卒業してからの 1 年半は、理想の体操教室づくりに向けた理念や運営方法の検討に費やします。教室名は、まず「ちくだい」と入れることを決め、鉄棒の「け上がり」の意味である「KIP」を組み合わせました。村田さんは「懸垂でぶら下がったところから、股関節や肩関節の反動で体を持ち上げるけ上がりは、小学生には難しい技ですが、け上がりができた瞬間のような達成感を味わってほしいという願いから、それにちなんだ名前を考えましたが、結局そのままの名前にしてしまいました」と話し、さらに、小さな子には「体操クラブ」よりも「キップ」の方が言いやすいことも理由に挙げます。 子どもたちを飽きさせない会話も大切だ 逆上がりの練習中 学校などではあまり取り組まない 「ぶら下がる」動作も積極的に行う 5 特集 十勝で体と心の成長を育む体操教室を運営し開かれた大学、地域の健康づくりにも取り組む ── 一般社団法人 ちくだいKIP  
立ち、スタートから半年後の 10 月には体操競技経験のあるスタッフ 1 人を迎えました。その後も会員は順調に増え、2019年 1 月には250人に達した、ちくだいKIPですが、新型コロナウイルス感染症の蔓延防止のため、2020年 3 月から 3 カ月にわたり教室が開けず、収入が激減し、先行きが見通せない時期もありました。それでも休校中の間、体操教室に来られない子どもたちのために、自宅で運動してもらおうと「家KIP」というライブ配信をスタートさせ、スタッフ総出で帯広市内の道路でゴミ拾いを行うなど、情報発信を続けました。教室を閉めている間もクラウドファンディングで支援してくれる各家庭にも助けられながら、コロナ禍を乗り切りました。十勝における「畜大ブランド」は絶大で、村田さんのほかに、畜大体育教員の川口亜佑子さんも、ちくだいKIPの理事として運営に参画しており、大学教員がエビデンスに基づき、やる気や忍耐力などの非認知能力を高める指導を行う信頼感は、ちくだいKIPの大きなセールスポイントになっていて、口コミだけで会員が集まります。大学からは「ちくだい」を名乗った活動の許可、体育館使用料の減免などの支援、体育会には体操教室の時間帯を避けて体育館を利用するといった協力を得ています。ソーシャルビジネスにも挑戦ちくだいKIPでは、体操教室以外の活動として、地方自治体と一緒に社会課題の解決に取り組む事業を新たに進めています。中なか札さつ内ない村では、2020年度からコロナ禍の運動不足対策として村からの委託を受け、毎月 1 、 2 回、子どもの体操教室と、大人の健康教室を開いていました。2024年度からは、民間事業者が資金を調達して社会課題を解決する事業を実施し、お問い合わせ先一般社団法人ちくだいKIP☎080─9355─7295(代表)電子メール info@chikudaikip.com HPアドレス https://chikudaikip.com/ その成果に応じて行政が報酬を支払う方式「ソーシャルインパクトボンド」を取り入れた、新たな事業を始めています。従来型の教室も人気がありましたが、大人の健康教室に参加するのは健康な人たちばかりです。行政が期待する、地域の医療費削減につながるような人たちの参加を促す施策が必要だと、村田さんは気づきます。運動が嫌いな人や運動したくてもできない人といった運動無関心層を呼び込むために必要なことを調査し、ちくだいKIPが運動プログラムを作成し、中札内村で実践した取組が「フィットジャーニー」です。村民の一部700人にアンケート調査をすると、約半数は運動無関心層でした。さらに運動をしない理由を分析すると、腰や膝が痛いといった「身体的要因」、何をすればいいか分からないなどの「心理的要因」、運動の優先順位が低い「リテラシー的要因」、介護や子育てに忙しいといった「社会的要因」に大別されました。子育て世代の参加を促すために子どもを預かる「プチKIP教室」を開いたほか、運動後にはお酒を 1 杯提供する教室など、 4 コースの運動プログラムを実践し、参加人数などあらかじめ設定した目標数値を全て達成しました。村田さんは「こうしたソーシャルビジネスにも可能性を感じていて、体操教室との二本柱でちくだいKIPを運営できれば、元体操選手だけを雇用する組織ではなく、ソーシャルビジネスや福祉事業に詳しい人、財務面に明るい人なども登用でき、より魅力的な組織になるのではと考えています」と語ります。 運動に無関心だった住民が参加するフィットジャーニー(中札内村教育委員会提供) コロナ禍に配信した家 KIP 動画のひとコマ 第 25 号 Quarterly 6
ほっか いどうの 本 このコーナーは北海道の出版社から発行された本を社員が読み紹介しております。お近くの書店にない場合は発行先へお問い合わせください。特記以外は税込価格です。 コロナ禍を経て、対面コミュニケーションの重要性が再評価される中、本書は集団での問題解決におけるファシリテーションの意義や手法を詳しく解説しています。著者は、「違った考えの人と話すことは刺激的で楽しい」と述べ、参加者が義務感ではなく、楽しんで会議に参加できる環境づくりの重要性を強調しています。本書では、ファシリテーターが中立的な立場から議論を進行し、相互理解を深める役割を果たすことが中心テーマとなっています。長年にわたり国や東京都、地方自治体などの審議会・委員会に参加してきた著者による、具体的な技術や手法が分かりやすく豊富に紹介されています。現代において、コミュニケーションスキルはさらに求められています。ファシリテーションの知識を身につけることで、会議やグループワークがより生産的で意義のあるものになることが期待され、参加者全員が「参加してよかった」と感じられる価値ある場を創造できることでしょう。今すぐ実践できる役に立つ 1 冊です。(東京営業部安井博幸)本書は、北大名誉教授の越野武さんが長年に亘って調査・研究された、札幌の明治から昭和時代にかけての歴史的建造物を紹介する建築エッセイです。札幌市時計台、豊ほう平へい館かん、清せい華か亭ていなど札幌を代表する建築物の来歴や設計思想が丁寧に紹介され、学術的な内容でありながら、著者の人柄が伝わってくる柔らかい筆致で語られています。特に印象的だったのは、北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)のエピソードです。皆さんお馴染みの赤れんが庁舎は、屋根の中央にそびえる八角形のドームが特徴の建物ですが、そのドームが耐震性の問題から撤去されていた時代があったようです。これを復元させるため、骨組みからの見直しや、屋根に使用する素材を探しに宮城県まで足を運んだことなど、多くのドラマが語られていました。私たちが目にする建築物には、それぞれの時代を生き抜いてきた物語があります。本書を読み、建築物の歴史に想いを馳せながら、札幌の街を歩いてみてはいかがでしょうか。(技術広報部石田萌子)動物園にきりんの親子がやってくることになり、園長はきりんさんのオリジナルソングを作りました。ページをめくるたびに歌が出てきて、おもわず口ずさみ心が弾む絵本です。でも、きりんさんが動物園に来ることになった理由は、遠い国で戦争がおこり元の動物園で生活することができなくなったから。現在、この世界には同じ思いをしている人がいます。自分は 5 歳の息子にきりんさんの気持ちと平和について伝えるきっかけになりました。作者の大平まゆみさんはバイオリニストであり、難病ALSの闘病中です。そんな中で物語を生み出し、作詞・作曲を行いこの絵本を作り上げたそうです。病と闘いながらも果敢に挑戦したこの作品を通して命の大切さも教えてもらうことができました。巻末のQRコードにアクセスすると、作曲されたきりんのうたを聞くことができます。絵本を読み聞かせ中、私が節をつけて歌ったメロディーとは全く異なり親子で大爆笑。思いがけず楽しい時間を過ごせました。(総務・共育部中澤寿恵)札幌クラシック建築追想都市と建築老眼遊記978-4-906740-67-3越野武著A5判240頁3300円亜璃西社発行☎011・221・5396きりんのうた978-4-86721-145-8大平まゆみ作/ひだのかな代絵A4変型判 32 頁1760円北海道新聞社発行☎011・210・5744ファシリテーションの手引き書978-4-87739-416-5大下茂編著A5判104頁1100円共同文化社発行☎011・251・8078 大下 茂 編著 ファシリテーション の手引き書 ファシリテーション養成講座 Skills Labo 1 KITABA’s SKILLs LABORATORY 共同文化社 7 ほっかいどうの本 7
北星学園 余市高等学校 余市 消防署 余市町 総合体育館 余市町中央公民館 余市町役場 余市警察署 余市紅志高等学校 余市駅 赤井川村 仁木町 余市町 古平町 泊村 共和町 積丹町 岩内町 倶知安町 ニセコ町 蘭越町 黒松内町 島牧村 真狩村 喜茂別町 京極町 留寿都村 寿都町 神恵内村 小樽市 小樽市立病院 小樽潮陵高等学校 小樽双葉 高等学校 小樽未来創造高等学校 小樽明峰高等学校 小樽市総合体育館 小樽市民会館 小樽市役所 小樽警察署 小樽市立高等看護学院 小樽商科大学 小樽駅 南小樽駅 小樽市立病院 小樽水産 高等学校 北照高等学校 小樽駅 南小樽駅 小樽築港駅 塩谷駅 蘭島駅 小樽市総合博物館 小樽桜陽高等学校 小樽市 保健所 5 5 229 229 229 230 230 276 229 229 393 393 393 5 5 5 5 5 5 5 小樽IC 朝里IC 小樽塩谷IC 小樽IC わが家のかかりつけ 内 科 電話 病院名 小樽市立病院 診  療  科:内科/呼吸器内科/消化器内科/循環器内科/血液内科/糖尿病内科/内分泌内科 /脳神経内科/腫瘍内科/外科/心臓血管外科/脳神経外科/整形外科/形成外科/精神科/リウ 児科/皮膚科/泌尿器科/婦人科/眼科/耳鼻咽喉科/放射線診断科/放射線治療科/病理診断科 専門センター:消化器病センター/心臓血管センター/脳卒中センター/認知症疾患医療センター センター/女性医療センター/手術医療センター 「小樽市立病院」と「かかりつけ医」が連携してあなたの健康をサポートします。 保存版 おたる・しりべし健康地図 〒047-8550 小樽市若松 1 丁目 1-1 小樽市 余市町中心部 後志総合振興局 全域地図 2 ブック・ストーリーズ本づくりのさきにあること─。小樽市立病院は、 2 つの市立病院を統合・新築して、2014年 12 月に現病院が開院しました。2024年 12 月に開院 10 周年を迎えたことを記念して、『小樽市立病院ガイドブック 80 人のドクターが語る身近な病気と対策』を発行しました。小樽市をはじめとする後志地域の医療の中核を担う同病院の専門医たちが、よくある症状に潜むさまざまな病気を解説するなど、一般的な記念誌や病院紹介冊子とは一線を画す“役に立つ”読み物に仕上げています。本書の企画・編集を主導した前小樽市立病院院長で小樽市病院事業管理者・病院局長の有村佳昭さんに制作意図やガイドブックに込めた思いを聞きました。(文・写真/片山健一取材日2025年 3 月 11 日・ 4 月 3 日) 『新病院開院10周年記念【保存版】 小樽市立病院ガイドブック  80人のドクターが 語る 身近な病気と対策』 書籍概要  小樽市立病院の歩みや役割を示すインタビューと、診療科・部門の紹介、地域医療を 支えた新型コロナウイルス感染症への対応、災害医療に貢献する DMAT(災害派遣医 療チーム)の活動のほか、院内の専門医が症状に潜む病気について解説する「よくある 病気と心配事」などで構成する。A4 判、160 頁、オールカラー、ソフトカバー、2025 年 4 月 共同文化社発行。価格:1,320 円(税込)。ISBN:978-4-87739-421-9。 本書お問い合わせ・ご購入先  株式会社 共同文化社 札幌市中央区北 3 条東 5 丁目 電話 011-251-8078 FAX 011-232-8228 URL https://www.kyodo-bunkasha.net/ 道内書店をはじめ、Amazon、共同文化社サイトなどから購入いただけます。 「誌上カンファレンス」でアドバイス─症状別に考えられる病気を複数の医師が解説するというユニークなガイドブックを作った理由は。専門家ではない方が、症状からインターネットなどで病気の情報を探して、「きっとこれだ」と見つけ出した病名は、私たち専門家からすると「どうしてそのような病気にかかったと思うのだろう」と首をかしげたくなるような的外れな希少疾患のケースがあります。一般の方が情報に振り回され、勝手に判断することは非常に危険なので、分かりやすく実用的な書籍を作ろうと考えました。腹痛、腰痛、頭痛といった痛みの症状から考えられる病気について、当院各科の医師たちが「誌上カンファレンス」を行う形で、頻度の高い疾患と治療法などを解説しています。一つの症状について専門家が寄り集まって書いている書籍を見かけたことがないので、編集会議で提案しました。また、身近な「かかりつけ医」を持ってもらうため、後志管内の病院やクリニックの所在地と電話番号、診療科目を地図に落とし込んだ「おたる・しりべし健康地図」を付録として作製したほか、管内の開業医向けに、地域医療支援病院である当院の専門外来や紹介していただきたい疾患などについても詳細に示しています。 【編著者】小樽市立病院  編集/病院広報著書製作委員会委員長  有村 佳昭 さん 発行の目的などを語る有村病院局長 第 25 号 Quarterly 8
倍率は札幌の病院に負けないほどです。これからも患者さんや働き手にも選ばれる病院であり続けるためには、さまざまな活動や教育体制を充実させて、魅力を高めていく必要があります。当院がどんな医療を提供しているのかを広報し、在籍する医師一人ひとりに親近感を持ってもらうことも大事だと思います。その一つのツールとして、本書が役に立てばと思っています。 25 災害医療の未来を創る DMAT  ディーマット リに入力することになっており、さまざまなアプリを使用することの複雑さと不便さを感じました。このミッション終了後、翌 1 月 13 日に新潟港より小樽港行のフェリーに乗り帰院しました。能登半島の復興は未だ道半ばであります。 1 日も早い完全復興を心からお祈りしています。災害拠点病院としての役割を果たすために私たちの平時の活動は、DMATの訓練と、院内の防災訓練があります。DMATの訓練は、南海トラフ地震・首都直下地震を想定した全国訓練、千島海溝地震等を想定した全道訓練とともに、小樽市総合防災訓練、技能維持研修、衛星携帯通信訓練に参加してさまざまな災害に対応できるよう努めています。所属部署職員皆さんのご理解、ご協力があってこその活動であり、この場を借りて改めて感謝申し上げます。院内では各々年 1 回行われる災害実動訓練、災害対策本部訓練に取り組んでいます。関東大震災後、物理学者の寺田寅彦氏は「天災は忘れた頃にやってくる」と、防災意識が時間と共に薄れていく意味での「風化」に警鐘を鳴らしましたが、近年の地震、火山活動の活発化、地球温暖化による台風や豪雨災害の頻発により「天災は忘れる前にやってくる」時代となった今もさまざまな調査結果から、被災の経験の有無による防災意識の地域差は未だ大きく、また被災経験があっても次第に風化が見られており、啓発活動を継続する重要性を強く感じます。私たちDMAT隊だけではなく、職員の皆さんにも意識を高めていただき、災害拠点病院としての役割を果たしていけるよう努力していきたいと思います。 DMAT 隊員は来たる災害に備え、訓練を重ねています。防災意識を 風化させないための啓発活動にも力を入れていきたいと考えています。 むねがいたいカンファレンス①よくある病気と心配事 こどもの、むねがいたい ・特発性胸痛 [まだある!こんないたみの原因] 川崎病 ・自然気胸 おとなの、むねがいたい むねの病気 ・自然気胸 ・胸膜炎 ・肋骨骨折 ・肋間神経痛 ・急性大動脈解離 ・急性冠症候群 (急性心筋梗塞・不安定狭心症) ・無症候性心筋虚血 ・心膜炎・心筋炎 ・肺動脈血栓塞栓症 ・縦隔原発の悪性リンパ腫 ・逆流性食道炎 ・食道カンジダ症 ・食道がん ・帯状疱疹 [まだある!こんないたみの原因] 帯状疱疹後神経痛 全身の病気 ・褐色細胞腫 ・甲状腺機能亢進症 (バセドウ病) 誌上カンファレンスのページでは、小樽市立病院の現役専 門医たちが、「よくあるいたみ・なやみ」に隠れているかも しれない 107 の病気を解説しています。「しつこい頭痛の原 因はカビによる副鼻腔炎だった」、「腰と背中が痛くて湿布を 貼っていたけど実は虫垂炎だった」など、リアルなエピソー ドを交えながら診断や治療について説明しています。 2024 年 4 月に小樽・後志地 域で初の「地域医療支援病 院」に承認され、12 月に開 院 10 周年を迎えたことを 機に、当院がどんな病院で あるかを広く伝え、また地 域住民の皆さんに親しみを 持ってほしいという思いか ら、職員の総力を挙げて本 書を完成させました。 コロナ禍の教訓や災害医療の役割を伝える─ 2 つのトピックスとして、新型コロナウイルスのパンデミックを振り返り、DMATの活躍を取り上げています。コロナに関しては、2021年 4 月から院長に就任した私が、責任者として経験したことを書き記したいという思いがありました。例えば、市内の学校で多数の学級閉鎖があり、そこに通う子を持つ病院職員が全て欠勤すると、たちまち医療が逼迫します。そこで、子どものPCR検査を当院で行い、陰性であれば、職員が出勤できる当院独自のルールを作成し、人員を確保しました。未曽有の事態に対峙し、正解のない問題を走りながら考え続けたことで得られた教訓をまとめました。「小樽市立病院DMAT」については、大規模災害が頻発する中、その重要性が高まっており、実際に2018年 9 月の北海道胆振東部地震では大規模停電の中、小樽市内の医療活動維持のための態勢整備、2024年 1 月の能登半島地震では現地へ派遣され、石川県七尾市で高齢者施設入所者の健康管理などを担いました。当院は災害拠点病院でもあるため、管内に泊原発が所在することを念頭に今後は原子力災害を想定した訓練にも取り組もうと考えています。このように重要な取り組みである当院DMATの役割や活動状況を伝えようと取り上げました。選ばれる病院であり続けるために─これから小樽市立病院をどのように運営していきたいですか。私は、夕張市出身で、札幌医科大学医学部に入学しました。卒業後は大学院へと進み、約 20 年にわたり炎症性腸疾患の再生医療の研究を続けてきました。 10 年ほど前、札幌医科大学附属病院の元病院長、前麻酔科学講座教授で当時の小樽市事業管理者・病院局長並木昭義先生と札幌医科大学OBの小樽市立病院長近藤吉宏先生が大学に訪ねてきて、臨床経験の乏しい私を小樽市立病院に誘ってくださいました。見学すると、活気があって、真新しい病院を一目で気に入りました。本書は、新病院開院 10 周年の記念事業として企画したものですが、 4 期 16 年にわたり病院局長を務められ、この春に退任された並木先生が、かねてより地域住民への還元と病院職員への教育のための本を作りたいと希望していたため、花道を飾るものにしたいという思いもありました。札幌から近く、観光地としての魅力も備えた小樽にあり、新しい設備の整った当院は、若い医療関係者にも人気が高く、特に研修医からの希望 表紙をめくると、特別付録の 「おたる・しりべし健康地図」 が収納された薬袋が目を惹き ます。身近な医療機関が一目 で分かるので、かかりつけ 医を探すのに役立ちます。 9 Book Stories  本づくりのさきにあること─。
青い落ち葉978-4-86721-153-3キム・ユギョン著松田由紀・芳賀恵訳四六判272頁2420円シマフクロウのすべて978-4-86721-155-7山本純郎著B5判508頁5940円北海道コンサドーレ札幌オフィシャルガイドブック2025978-4-86721-157-1北海道新聞社編コンサドーレ監修A4判104頁1650円くまの子えふたんのこれも、おべんとう?978-4-86721-148-9北海道日本ハムファイターズ監修三宅優輝絵林苑芳作A5変型判 24 頁1870円北海道日本ハムファイターズオフィシャルガイドブック2025978-4-86721-156-4北海道日本ハムファイターズ編A4判112頁1650円道新プラス北海道の病院202516747-03北海道新聞社編B5判268頁990円───北海道新聞社 060 ─ 0041 札幌市中央区大通東 4 ─ 1 ☎011・210・5744楡文叢書 7 隠逸詩人陶淵明978-4-8329-6902-5熊征著A5判244頁7700円労働をめぐるシスターフッドプロレタリア文学・フェミニズム・労働研究978-4-8329-6903-2辻智子・水溜真由美編著A5判240頁4950円日本サブカルチャーと危機死と恐怖の表象史978-4-8329-3420-7押野武志・横濱雄二・諸岡卓真・高橋啓太・井上貴翔編著四六判264頁3960円スラブ・ユーラシア叢書 17 ロシア北極域経済の変動サハ共和国の資源・環境・社会978-4-8329-6904-9田畑伸一郎編著A5判272頁6820円───北海道大学出版会 060 ─ 0809 札幌市北区北 9 条西 8 丁目☎011・747・2308 25 ─ 26 北海道キャンプ場ガイド978-4-906740-68-0亜璃西社編著四六判352頁1650円───亜璃西社 060 ─ 8637 札幌市中央区南 2 条西 5 丁目☎011・221・5396北海道人たちの満州開拓─大陸新農法を巡る攻防・終焉・再挑戦─978-4-86453-105-4高尾英男著A5判164頁2750円───北海道協同組合通信社 060 ─ 0005 札幌市中央区北 5 条西 14 丁目☎011・209・1003WARTCARTOON〈 1 コマ漫画〉から読み解くミャンマーの苦しみと願い978-4-909281-65-4自由と平和な表現活動を支援する団体WART編A5判 72 頁1100円高校「公共」副読本高校生と探究したい北海道の地域課題978-4-909281-66-1前田輪音編A5判168頁2310円───寿郎社 060 ─ 0807 札幌市北区北 7 条西 2 丁目☎011・708・8565大雪山研究と開発のパイオニア大雪山調査会978-4-8328-2405-8清水敏一著/大雪山調査会創立100周年記念誌出版委員会編A5判270頁3960円───北海道出版企画センター 001 ─ 0018 札幌市北区北 18 条西 6 丁目 2 ─ 47 ☎011・737・1755ファシリテーションの手引き書978-4-87739-416-5大下茂編著A5判104頁1100円その花可憐に色青し北海道亜麻物語978-4-87739-418-9齊藤俊彦編著A5判224頁2200円爪句@空撮日記─2024978-4-87739-417-2青木曲直著100㍉× 74 ㍉236頁500円───共同文化社 060 ─ 0033 札幌市中央区北 3 条東 5 丁目☎011・251・8078GEM木版画会会員札幌市在住 表 紙 の ことば 春を待つ金山道子木版画 53 ㌢× 43 ㌢JR星置駅から 6 、 7 分歩くと、住宅街の一角に星置緑地が広がります。面積は 2 万 3 千平方メートルほど。トドマツ、ヤチダモなどの樹林の湿地に白いフードを被ったように咲くのは水芭蕉。葉の形が芭蕉の葉に似ているのでその名がついたとのこと。雪が解けてきた春一番に咲き、 4 月下旬くらいに見頃を迎えます。こんな緑地をいつまでも大切にしたいものです。新刊情報書名の下の数字は日本図書コード(ISBN)及び雑誌コード。特記以外は税込価格。お近くの書店にない場合は発行先へお問い合わせください。 Quarterly 北海道の印刷出版文化情報誌[季刊アイワード]第 25 号(通巻37 1 号)2025年 4 月 15 日発行編集■季刊アイワード編集委員会発行■株式会社アイワード〒 060 - 0033 札幌市中央区北 3 条東 5 丁目 5 番地 91 ☎011・241・9341 ※季刊アイワードのバックナンバーを 弊社ホームページよりご覧いただけます。 URL https://iword.co.jp